こんにちは。
京都光林堂、京印章シーオージェイピーの荒井です。
さて、このページをお読みの方は、いろいろなご事情でハンコ(印鑑)をおつくりなる予定の方かと思いますが、既に2個目・3個目という方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか。
特に個人の実印や法人の代表印などは、一度作ればそうそう作り変えるものではありません。ですので、ハンコを作る方は、その多くが「初めてのハンコ作り」といった方ではないでしょうか。
いろいろ種類や値段がいろいろあるみたいだけれど、いったい、何を基準に選んで良いかわからない。
でも、安い買い物でもないので、失敗はしたくない!
正直、そんなお気持ちではないでしょうか。
そこで、ここでは、あなたの事情と考え方にピッタリな1本を選んでいただく為のヒントをお話したいと思います。
特に、印鑑(印章)を初めてお作りになる方は、じっくりとお付き合いください。
いい印章(印鑑)とはどういうものでしょうか。
ハンコというものは、不思議なもので。お客様にお買い上げいただく物、そのものは小さな棒状の物質『印材』なのですが、世の中に必要とされるものは、紙に押された『印影』と呼ばれるものです。
したがって、『印章(印鑑)の質』を議論しようとおもうと、この2つの点から考える必要があります。
・印影の質を考える
・印材の質を考える
では、まず、印影の質から……
印影の質は、3つのポイントから考える事が出来ます。それは
・決して同じ印影が存在しない事
・デザインとして美しい事
・仕上げが丁寧な事
当然ながら、印鑑は、それを押す事で、そのはんこの持ち主がその書類の内容について了解した。という証明になります。従って世の中に、二つとして同じものがあってはならないものです。
昔は、手で彫る事が当たり前だったので、同じ印影が出来上がる確立は、ほぼゼロといっても良いものでした。
しかし、ここ10余年。彫刻ロボットという便利な機械がはんこ業界に浸透してきました。このロボットのおかげで、はんこの製造スピードが大幅にあがり、価格もお求め易い価格になりました。もちろん、当店でも採用しています。
しかし。ロボットはロボットです。残念な事にロボットは、同じ質の作業を大量に行う事がとても得意な機械です。従って、同じプログラムに同じ条件で同じ名前を入力すると、当然、出来上がるものも、同じものになります。
いわゆる激安店では、この状態で、『できた!』として納品される場合があります。もちろん、初めてお買い上げになる方には、届いたハンコがどういうものかは、分からないまま……。
これ、ハンコにとっては、とてもマズイ事だというのは……。ここまで読んでいただいたあなたには、分かりますよね。
では、どうするか。
一つの答えは、同じ設定条件での制作を行わないという事。
例えば、書体。
ちょっとユニークな書体を指定する事で一般的なお名前(鈴木さんも佐藤さんも)でも必ず同じものが仕上がる可能性を下げる事が出来ます。
当店では、業界最大級の27書体をご用意する事で、この点について、対応いたしました。
でも、恐ろしい事ですが、同じものを狙って作られると……これだけでは、対策できません。
それに対する答えが、次の二つの『質』にあります。
日本には、書道。というものがあります。
西洋にもカリグラフィーというものがあります。
つまり、文字と文字の形・配列には、「美しい並び」というものがあるという事です。
現代のロボットは、印材のサイズを指定して、彫刻する内容(文字・書体)を入力すると、自動的に文字を並べて印影をレイアウトしてくれます。それをそのまま彫刻すると、前段の同一性のあるハンコが量産されてしまうわけですが……。
さて、美しさのお話でした。
断言してしまいますが、残念ながら、ロボットが自動配置した印影は、美しくありません。良心的な印鑑店では、必ず、ロボットが配置したレイアウトを手作業で調整しなおします。
どれくらい違うかといいますと……
と
くらい違います。
同じロボットを使っていても、各印章店の職人の美的センスが、まずここで発揮される事になります。印章店の職人は、私も含めて書道をたしなむ人が多いのですが、その理由。お分かりいただけますでしょうか。
印章の仕上がりに大きな影響がある作業が2つあります。
1つは、「印面磨き」です。
印鑑は、平らな紙の上に捺すのですから、当然、印面は出来うる限り平滑であるべきです。波打ち・凹凸などがあると印影の一部が擦れるなど印鑑としての性能に大きな問題が発生します。
ちなみに、当店では、彫刻前1回と彫刻後2回の最低3回の印面の平滑化作業(面訂といいます)を行っています。特に、彫刻後の面訂は、彫刻時に発生するバリ(ゴミ)を取るという意味も含めて、絶対に必要な作業になります。
もう一つが、「仕上げ彫り」です。
ロボットの彫刻等で彫られた印影は、画面上、美しいデザインであっても、線の細さや曲線の再現に限界があります。そこで、本当に美しい印鑑に仕上げる為に、古くからの手彫り印鑑と同じように、手による仕上げを行う必要があります。
彫刻作業は、失敗のできない繊細で技術を必要とする作業です。
一定以上の技術と経験を持たない印章店では、この手彫り仕上げを行う事はできません。
面訂もしない、仕上げ彫りもしない。
そんな印鑑がどのような印鑑であるか……。
想像に難くありませんね。
では、おさらいです。
良い印影は、どうやったら手に入るでしょうか。
・絶対といって良いくらいに独自性のある印面デザインを
・人の目で美しくレイアウト調整をし
・印面、彫刻共に細部にまでこだわって最後は手作業で仕上げる
この3つを絶対に忘れないで下さい。
印材についてご説明する点は、
「材 質」 「サイズ」 「形 状」
の3つになります。
当店の商品ページをご覧いただいてもお分かりいただけるかと思いますが、印材として非常に多くのものが販売されています。
古い印章店に行くと、ディスプレイに象の牙がドーンと飾ってあったりするのを見た事はありませんでしょうか。
印材としての最高峰といわれる象牙から動物性のもの植物性のもの人工的な素材のもの。用途や性質により様々なものがありますが、印材として要求される性質は、以下の3点に絞られます。
・変形、劣化しないこと
・割れない、欠けないこと
・見た目
特に、印影を登録する場合は、登録されたものと同じ印影を時間が経っても再現できることが肝心です。割れ・欠け・変形がご法度である事は、お分かりいただけますでしょうか。
例えば、ゴムのように柔らかい素材は、捺すたびに形が変わる可能性がありますので、印鑑には使えません。また、通常の環境で保存するレベルで熱や化学変化による変形の可能性のあるものもお勧めできません。
通常、印材として販売されているものは、最低このレベルはクリアしていると考えて間違いありませんが、例えば、海外で土産物として販売されているような石材などでは、摩擦に弱かったりします。
趣味の落款印程度であれば、それもまた風流ではありますが、実印・銀行印などどこかに登録する印章(印鑑)には、決して使わないようにしましょう。
さて、問題は、割れ・欠けへの対応です。
チタンなど金属印材でも、絶対割れない・欠けない。という印材はありません。ですが、素材によりそれぞれ強さというものはあります。
一般的に、価格の安い印材は、割れ・欠けに対して弱いと考えて間違いありません。
といって、では、一番高い印材(例えば象牙)を選べば良いかというと、そうことでもありません。めったに使わないものに高いものを買うというのは、無駄である。そう考える方もいらっしゃるでしょう。
使用頻度が低ければ、耐久性が低い印材でも、破損の可能性は低くなります。
個人的には、個人の認印づかいなら、プラスティックから木製印材でも十分対応できます。
個人実印・銀行印などでは、もう少し堅い目のものを。
法人の実印や角印などは、かなり使用頻度も高くなりますので、少し高い目のものをお使いになっても良いかと思います。
余談ですが、私の知り合いには、創業当初、当店とのお付き合いが始まる前、一番安価な木製印材で作った会社実印が3年程で欠けてしまって、結局当店で黒水牛のハンコを作り直した方がいらっしゃいます。印鑑変更届にも相当の費用がかかりますので、ちょっとかわいそうでした。もっとも、いっしょに作った同じ素材の角印は、数十倍のペースで使用していても、かれこれ10年以上使えているようですが。
最後に、見た目です。
が、正直、これは好みです。
ただ、法人様で調印式などを行う業種や先生と呼ばれる職種の方の場合は、サイズも含めて見た目にもしっかりした印材をお使いになる事をお勧めします。
でも、お使いになる方が女性なら、模様があるようなちょっと華やかなイメージの印材もいいですね。
当店で扱う各印材についての説明は、こちらをご覧下さい。
同じ素材のものでも、サイズによって価格がかわります。
ですので、細い方がコストパフォーマンスが良い。と思われがちではありますが、それだけでもありません。
一定の面積の中にいくつかの文字を彫刻するのがハンコです。
従って、彫刻する文字が多い場合は、小さな印材をお選びいただくより少し太い目の印材をお選びいただいた方が、デザインの自由度が上がりよい印鑑を作る事ができます。
細い印鑑に、たくさんの文字を入れようとするとどうしても線が必要以上に細く仕上げる必要が出るなど、耐久性にも多少の影響が出る場合があります。
逆に、1文字などあまりに文字数が少ない場合は、一番太いサイズなどより、少し細い目のサイズの方がいいかもしれません。
また、持ち味や持ったときの印象というものあります。
男性と女性では、どうしても手の大きさが違います。
大きな手の中の細い印章は、見た目に頼りないイメージがあるだけでなく、持ちにくかったりして、きれいな印影を得られない場合があります。
女性が極太の印章(印鑑)をお使いになるのも同じ理由です。
また、見た目にも、細いものはエレガントな印象を。太いものは、信頼感と重厚感といったイメージを同席している方に与える事ができるといわれています。
当店では、男性・女性がそれぞれのサイズの印材を持ったイメージを作成しています。ぜひ、参考にしてみてください。
一般的に丸棒と天丸という2種類の形状があります。
個人用には、天丸という形状の印材を使う事はありませんので、ここでは法人利用の場合だけ考えましょう。
価格面で言えば、加工が複雑になる分、天丸の方が少しばかり高くなります。但し、扱いやすさという点では、くぼみのある天丸の方が使いやすいです。
あとは、見た目で用途を分けるといった理由などで使い分けていただければ良いと思います。
そういう意味で、当店では、最も捺印の機会の多い角印については、天丸のみのご提供としております。また、セット物についても、同じ丸印である実印と銀行印は、丸棒と天丸の組み合わせにしております。
いかがでしたでしょうか。
長らくのお付き合いありがとうございました。
正直、印材については、どちらでお買い上げになっても、よほどの事(劣悪な保存環境・水濡れなど)が無い限り、特別に違いもないかと思います。
私は、印章店の価格の違いは、印面へのこだわりの強さの違いだと思っていただいて、まず間違いないと思っています。そういう意味で、本当に良い印章(印鑑)をお届けしたいと日夜努力しております。
ぜひ、当店を含めて、いろいろとお比べになり、納得して当店へご用命いただければ幸いです。
世の中には、開運印鑑というものもあるようです。
運の開ける印面デザイン(印相)というものもあるそうです。
運勢や神仏を否定するつもりは毛頭ございませんし、私もどちらかといえば、信心深い方だと自負しております。が、残念ながら、私自身は、霊能者でも占い師でもございませんので、印相鑑定ならびに開運を売り物にした印鑑の作成については、対応いたしかねます。
何卒、ご容赦を……。